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ゆるくまにあ!

ゆるくまにあ! 《第22話》

JUGEMテーマ:ものがたり


ここは笠間の稲荷神社。
境内には、5月の爽やかな風が吹いて、気持ちのいいお天気です。

笠間兄弟1.jpg

イナリくんは朝から、あるものをおねだりしたくて、
キツネの兄者の周りをピョンピョン。

笠間兄弟2.jpg

「兄者! ねー兄者ってば!」

「ここを離れるわけにはいかねえんだ、後でな」

笠間兄弟3.jpg

「もういいよっ!
 べーっだ! 兄者のイジワル!!」
 
「あっ!こらイナリ! 待ちやがれ!!
 出かけるなら、ハンカチとティッシュを持ちやがれ!!」


 ◆◆◆


笠間兄弟4.jpg
 
裏山までピョンピョン走ってやってきたイナリくんは、
高い木の枝に座って、足をブラブラ。
 
「兄者は、いつも忙しい忙しいって・・・
 おいらのことが嫌いなのかなあ」


イナリくんには、日頃ずっと不安に思っていたことがありました。

兄者には怖くて聞けないこと。
でも、それが日に日に大きくなっていくのです。

イナリくんは、なんだかチクチクする胸のあたりを
ぎゅっと押さえました。

「おいらが、拾った子どもだから・・・」
 
「おいらがいなくなったって、
 兄者は探しになんて来てくれないんだ」


イナリくんのつぶらな瞳いっぱいに、涙が溜まり始めました。
 
 
「大事なお務めがあるから・・・
 うっ・・・ うわぁぁぁぁん」
 
えーんえーんと、泣きながらイナリくんは歩きます。

笠間兄弟5.jpg

あっちの家も、こっちの家も
民家の庭には、鯉のぼりが吊るされています。

笠間兄弟6.jpg

鯉のぼりは、「大切なわが子が健やかに育つように」との
願いがこめられたもの、家族の愛情の証だと、イナリくんはどこかで聞いたのです。

笠間兄弟7.jpg

「おかあさん・・・」

笠間兄弟8.jpg

イナリくんには、お母さんの記憶がありません。
生れ落ちたときから、ずっとひとりでした。
 
キツネの兄者は、出会ったときから
イナリくんを家族のように育ててくれました。
 
でも、血が繋がっていないのです。
家族だと証明できるものは、何もないのです。
 
大好きな兄者とも、いつか突然、
他人同士になってしまうかもしれません。
 
家々の軒先で、誇らしくその身を揺らす鯉たちを見るたびに、
イナリくんは胸の内に、
羨望と嫉妬が入り混じるのを感じて苦しくなりました。

 
 ◆◆◆


夕方のチャイムも鳴ったのに、
イナリくんの足は、稲荷神社から遠のいていきます。
 
(本当の家族じゃないおいらは
 兄者のところにいたって、困らせちゃうだけなんだ・・・)

 
下を向いてとぼとぼと歩くイナリくんは、
長く伸びる誰かの影を踏んで、立ち止まりました。
 
鼻水をすすりながら見上げたイナリくんを、ふわりと包んだのは、
視界いっぱいに広がる鮮やかな赤、金、眩しいほどの白・・・

笠間兄弟10.jpg
 
「はあ、はあ・・・ 
 お子様がこんな遅くに出歩いてちゃ、心配するだろうが! おやつの時間にも帰ってこねえで! 
 お出かけは、夕方のチャイムがなるまでって、約束しただろ!」
 
「兄者!?」
 
バフバフと布をかきわけて、隙間からようやく顔をだしたイナリくんが見たのは、境内の台座の上ではなく、商店街のアスファルトに凛と立つ、キツネの兄者の姿でした。

笠間兄弟9.jpg

「風を気って駆け回るのは、1350年務めを果たしてきて、
 2回目だったが・・・ 気持ちのいいものだな!」
 
「兄者、どうして・・・
 それに、この鯉のぼり・・・」
 
イナリくんを包んでいた色鮮やかな布は
憧れてやまなかった、
それはそれは立派な、赤い鯉のぼりだったのでした。
 
 
「イナリよ、俺が境内を離れず常に守らねえといけねえから、
 いつも、寂しい思いをさせちまって、すまねえな」
 
「まだまだ遊びたい盛りなのにな」
 
キツネの兄者は、
イナリくんの頭をくしゃくしゃと撫でました。

笠間兄弟11.jpg
 
「でも・・・ でも・・・」
 
大粒の涙を流しながら、
イナリくんは兄者を見上げました。
 
「おいらは、兄者のところに、いない方がいいんだ!
 お務めの、邪魔になるから・・・」
 

キツネの兄者は、イナリくんの目線までかがむと
じっと目を見つめました。

「いいか、イナリ」
 
「俺は、この笠間稲荷神社の境内から
 茨城県の、しいてはこの日本の、民の平和を守っている!
 お務めを任された俺が、勝手に動くことは、許されねえんだ」
 
「だがイナリよ、俺が境内の台座から降りた1回目ってのは、
 泣き声を聞いて、裏山で見つけた小せぇおめえを連れ帰ったときだ」
 
「おめえは、あの日から俺の宝だ!
 邪魔だなんて、思ったことは一度もねえんだ」
 
「兄者・・・」
 
「帰ろうじゃねえか!
 今日のおやつは、しるこサンドと昆布飴だったんだぜ」

笠間兄弟12.jpg
 
来たときには1つだった影。

商店街のあたたかい灯りに照らされて、歩く影は今度は2つ、
寄り添って アスファルトに長く伸びていたのでした。

笠間兄弟13.jpg

 
 ◆◆◆
 
 
「こらイナリ! 『仕上げはお母さん』が、済んでないだろうが!」
 
夜だけど特別におやつを食べてご機嫌なイナリくんは、
鯉のぼりに包まって寝床に潜り込みました。

 
灯りの少ない笠間の空は、見渡す限り満点の星空です。
 
今日もとてもいい日だったな、と
イナリくんは思いました。
 
『この日のことを、忘れずに覚えていよう』と、密かに誓うと
たくさん歩いて くたくただったイナリくんは、
あっという間に眠りに落ちていったのでした。

笠間兄弟14.jpg


 
《第23話へつづく!》

 
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  • 2014.05.09 Friday
  • 08:00

Comment
久しぶりに
カキコミに来ました~(笑)♪
  • あみ
  • 2014/05/12 4:24 AM
>あみさん

確か、2ヶ月ぶりだったか?
時が経つのは、早いもんだな・・・

またいつでも、コメント残していってくれよな!
俺たちは、いつでもあみさんのことを待ってるぜ!!
  • キツネの兄者@ゆるくまにあ!
  • 2014/05/12 1:18 PM
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